寿司十番のこだわり
続々と新店がオープンするバンコクにおいて、多くのご贔屓筋を抱える名店「寿司十番」。モダンな店内を眺めやると、つけ場を大きなカウンターが取り囲み、じつに洗練された印象。食材を炙っているほの赤い炭火、藁焼きブースから立ちのぼる炎、仕込みをする細やかな手つき、目の前で職人が握る華やかな姿――と、おいしさが出来上がる過程を共有する。調理風景もこうなると立派なごちそうだ。
職人技の醍醐味を味わう特等席。気さくな料理長との会話も楽しく、食も酒も進む
料理長の小林さんが握るのは、端正な味わいの江戸前寿司。寿司や蕎麦を出す和食処を営む実家で幼い頃より魚介を身近に見て育ち、職人の道へ。「小学校高学年の時には包丁握って、仕込みを手伝っていました」というから、そのキャリアも筋金入り。
料亭で懐石を学んだのち、和食一筋に修業を積んだ小林さん。真摯に料理に向き合う姿が凛々しい
多くの客の目当ては、高温の炎で食材の表面だけ豪快に一気に焼く「藁焼き」。表面はパリッと香ばしく、濃厚な旨みがギュッと凝縮されるのが特長で、藁の薫香をまとったネタはそのままつまみによし、握ってもらうもよし。肉厚で脂がのった鰹やサバはとくにおすすめだが、たとえメニューにない食材でも、リクエストすれば藁焼きにしてもらえるそう。
どこか懐かしい藁の香りが食欲を誘う。かつを藁焼き(310B)、はまち藁焼き(420B)
日替わりの一品が豊富なのも強みだろう。ベースとなる食材は豊洲から直送される、職人の目にかなう上質なものばかり。カツオの腸をコク深い塩辛にした「鰹の酒盗」(200B)や、ポン酢が香る「あん肝」(320B)はいつの間にやら酒が進んで止まらなくなるので、飲みすぎに注意。
生のニシンを刻んで塩麹で熟成させた北海道の郷土料理、鰊の切り込み(230B)も人気
季節の食材を使ったつまみを楽しんだ後は、いよいよ真打ち登場へ。酢や昆布でしめる、寝かせる、漬ける、炙るなどのひと仕事で魚介の旨みを最大限に引き出し、旬の味を最高の握りへと昇華させた「おまかせ8貫」で、江戸前の真髄を味わいたい。
確かな技術に裏打ちされた美味は、コースにも表れている。先付、前菜、刺身、煮物、揚げ物、握り8貫に味噌汁と、旬材を使った店の名物がひと通り味わえる贅沢さ。供された時の美しさ、口に広がる香り、食感とそのどれもが素晴らしく、和の魅力が詰まった品々に思わずため息。
季節に応じて入れ替える全国よりすぐりの銘酒も、料理に華を添えてくれる。旬の魚を味わいながら、盃を傾け、寿司に舌鼓。にぎやかな街バンコクで、今宵は上質なくつろぎのひと時を楽しみたい。
気のきいたおつまみに手の込んだ料理の数々をフルで味わう「おまかせコース」(2,600B)
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